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2014年2月10日

「じょぼれー」に感謝

山陽新聞 夕刊に 1月末まで 毎週木曜にコラム「一日一題」を担当していました。
遅ればせながら少しずつこのブログでも紹介しています。
高齢で独居の患者さんの所へ訪問診療に赴くことが少しずつ増えてきています。
皆さん、いつも診療の日を心待ちにしてくださっています。
日頃家に来る人もあまりいないからか、日常のことなどいろいろよく話される方も多く、時間のあるときはゆっくり聞いてあげる・・・それも我々の役目かなと思ったりします。
ボジョレならぬ、じょぼれーの話は12月21日にも少し書きましたが、今一度、この話を少し詳しく書きました。

「生きとっても何の役にも立たんし、いいことがない・・・早くお迎えが来ないかなぁ・・・」
訪問するたびそうつぶやく80歳の敏子さんは、市営住宅の2階からほとんど外に出られず独り暮らし。心不全で足がパンパンにむくんでもなかなか病院に行かなかったのを訪れた友人が見かねて無理矢理受診させ、ケアマネジャーから病院主治医へと話がいって在宅訪問診療へとつながった。買物はヘルパーさん頼み。家の中は動けるので炊事洗濯はこなしているが、外へ出て少し歩くと息が上がってしまう。
そんな敏子さんが「せんせ、じょぼれー持って帰られぇ・・・」といって1本のワインを差し出してくれたのが3年前。「毎年電話で取り寄せて買うてちょっとずつ飲んどるんよ。ほんとは先生と一緒に飲めたらええけど、そうもいかんから・・・」。折角の厚意を無にしないよう、家で飲みますねとお礼を言ったときの、その嬉しそうな顔といったらなかった。以後毎年秋になると無事1年過ごされたことをボジョレ・ヌーボーで祝っている。
些細なことでも敢えてしてもらって感謝を伝えると本当に喜ばれる。たとえ身体に不自由がなくとも自分が何の役にも立たないという無力感を感じる高齢者は多く、独居だとさらにそれは増幅される。してもらうばかりでなく何かしてあげることを通じて社会とのつながりを持ち、誰かの役に立ちたい、喜んでもらいたいという気持ちが1本のワインになる。独り暮らしの高齢者がそれぞれに役割を持ち、役に立っているという満足感から生き甲斐を持てるような工夫ができないものだろうか。