〒700-0924
 岡山市北区大元1丁目1番29号

電話応対時間 平日 9:00~17:00

トピックス TOPICS

2015年5月5日

自立支援のための介護サービスとは

介護支援専門員(ケアマネジャー)の資格をもっているのですが、その更新のための研修会へ3月に行ってきました。その中のある講義で聞いた話です。

介護保険の制度では、利用者さんから介護保険の申請があって新規の認定調査のためにかかる費用(人件費は含まない)は、1人あたり約12000円だそうです。当然、介護保険のサービス利用が必要になったために申請があるわけですが、中には 必要になったときにすぐに使えるように、という理由で前もって申請しておくという方もあるらしいのです。とある(?) 市では、そのような介護申請して認定だけ受けておきながら実は全くサービスを利用していないという人が200人くらいあるということです。

もちろんそれぞれにいろんな理由や事情があるだろうと思いますが、「私はこんなに大変なんです、しんどいんです」という証明書のようなものとしての介護認定を受ける方もあるということでした。デイ・サービスに2年間休まずに通った人と通わなかった人のADL(日常生活労作=どの程度動けるか)の変化を調査したら、休まずに通った人の方が低下していたというデータがあるそうです。それまでは自宅でお風呂に入ることができていた人がデイ・サービスでしか入浴しなくなり、いざ自宅で風呂にはいろうとしたら浴槽をまたぐことができなくなっていたということです。ヘルパーさんの利用でついでに掃除もしてくれているので、自分で掃除することもできなくなってしまっていた・・・という話でした。自立支援とはどういうことか、何が本当に必要なのか、と考えさせられました。

by ナースかをりん♪



患者さんのお宅の庭先に咲いた花

話を聞いたとき、なるほどー ・・・そんな話もあるのか、と感心して聞いていました。
2つめの話のデイサービスの利用有無によるADL変化の話ですが、これについては、安易に人任せにしてしまって自分でやる気概を失ってしまったら却って悪化するという話で、こんな話もあるという1つの例として考えたらよいのでしょうか。

結局 与えるだけの援助になってしまわないように、自助自立のための支援とするにはどうしたらよいのか、という視点でサービスを考えてゆかなければならないことを考えさせられます。
ただ、もうひとつ、調査方法というかデータの扱い方について、もっといろいろな要因を考慮して統計処理を行ってみる必要があるのではないかと感じました。直接その講義を聴いていないので何とも言えませんが、おそらく話からするともともと同じ程度のADLの人を、デイに通った群と通わなかった群に分けて比較したのではないかと思います。
例えばこんな推論は成り立たないでしょうか。
デイに通わなかった人達は、比較的状態が良くて通わなくても良かったから通わなかった、2年経ってもそんなにADLは悪くなってなかった。一方でずっと通っていた人達は 通わないといけない何かしらの理由・・・状態が悪化するスピードが速くて、早いうちに家の風呂には入れなくなりデイで入らざるを得なかったとか、家族の介護負担が大きいから昼間はデイで預かって貰って、とかの事情・・・があって、通わざるを得なかった。ADLの低下のスピードが速くて2年経つと更に悪化していた・・・ 
仮に同じ介護度であってもADLの幅がかなりあるというのは我々よく実感するところです。
それに、高齢者が自然に生活していて2年経つ間に、それまでできていた浴槽をまたぐという労作が2年経って筋力低下のためにできなくなる、ということも十分に考えられます。デイサービスへの参加の有無が、統計学的に有意な差をもってADLの悪化に影響する、デイに行くとそれまでできていたことができなくなる、ということを示すのはなかなか難しいことかもしれません。
様々な背景や条件をそろえて対象を選び、慎重に扱った統計データからそういった結果がでたのであればとても面白いと思うのですが、単純な比較から短絡的にデイサービス無用論に流れてしまうとおかしなことにもなりかねません。
最近、「ビッグデータ」という言葉が聞かれるようになりました。そういえば先日の在宅医学会では、千葉県のある市の 後期高齢者医療レセプトと 要介護認定調査データの突き合わせから 訪問診療の有無と介護度との関連を調べた発表もありました。

介護保険や医療の電子レセプトなどのデータが埋もれてしまうことなく行政機関でうまく利用されて、よりよいサービスや効率的な支援に結びつくとよいと思います。
by ももたろ