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2010年6月16日

今日は東へ

今日は突然のケアマネジャーさんからの依頼で夕方から東の方へ初診に行ってきました。
長年、市内の総合病院の外来に通院し、白血病の治療をしてこられた後期高齢者の女性の方ですが1年ほど前に通院帰りの途上で倒れた頃から認知症がはじまって自宅から殆ど出ることがなくなりだんだん体が動かなくなって、薬も殆ど飲まなくなり、ここ1ヶ月はほぼ完全に寝たきり。やっとのことで病院主治医から意見書をもらって介護保険申請。包括支援センター経由で調査員が自宅を訪問したところ、あれれこれはひどい、話が全然違って寝たきり状態じゃないの、ということで急遽居宅事業所が決まり、当院へ連絡があったのでした。自分で寝返りも出来ず、ここ1週間ほど食事が殆ど食べられていないということで、とりあえず採血検査と点滴を行いました。一時的な衰弱であって何とか持ち直してもらえるのではないかという気がしています。御主人と近所に住む娘さん夫婦の御家族もどうしたらよいか困っていたとのことで介護保険スタッフや当院が関わって少しは安心してもらえたようでした。とりあえず明日また行ってきます。
血液内科の専門外来で白血病は管理されていましたが、せっかく処方した薬が飲まれないまま山となって積まれたままになり、四肢の筋萎縮が進んで寝たきり状態。生活全体をみることの大切さを痛感します。この方の衰弱した状態を何とか少しでも良い状態に持ってゆきたいと思いますし、また今後介護認定を妥当な線にもっていって必要な介護体制作りに協力したいと思います。

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COMMENT: しんちゃん   御主人と近所に住む娘さん夫婦の御家族もどうしたらよいか困っていたわたしも同じような状況になったことがあったのですが、「困っていた」状況が本当によくわかります。思い出して軽く胃痛になるぐらいに・・・あとから思えば、もっと早く「こういうふうに手を打っておけば良かった」とか、「ああいうふうに手を打っておけば良かった」とか思うのですが、どうしても一つの状況でループしてしまって、そこから抜け出すことができず、あるところまで病状が悪くなって初めて、状況が変わるということが1~2度ありました。・・・かといって、周りの家族の意見が必ずしも患者本人の納得するところでもないので、難しいところです。
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COMMENT: まっちゃん  どこも同じですね~。殊に血液は、やっぱりそうなんでしょうか?一発逆転を狙うギャンブラー気質を感じます。『バランス感覚』が歪んでるのか、次第に後退したのか…。ある本(4コママンガ)に似たような話がありました。鹿の角と、鹿の前足と、鹿のお尻の専門家がいて、3人が集まって全体像を話したら、角と前足とお尻しかない生き物になった…。ありのままに捉えることは、意外と難しいのかも…?
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COMMENT: ももたろ   しんちゃんさん、そうですね。こういうとき、どのようにしたらよいのか、どのような選択肢があるのか、無限ループから抜け出す解決の糸口となる指針をプロの目線でみて提示する事が大事だと思っています。そして最終的には本人や家族で決めてもらったら良いことです。介護地獄による悲劇のニュースなど聞くたびプロのサポートがきちんと入ってなかったのかな~と残念に思います。ケアマネジャーさんとか訪問看護師さん、ヘルパーさん、等々みんなそれぞれの職種の視点で解決のためのアイデアを提示してくれることも多いのですが、今の在宅医療の制度の中で一番の情報センターというか、航路を決める船長としての役割を求められているのが在宅医ではないかと思います。
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COMMENT:ももたろ   まっちゃん、血液だからというわけじゃないと思いたいですが・・・(笑)病院の専門外来で患者を診ているとどうしてもその”病気”だけを診ざるをえない、他のことまでは責任持ってみることはできないと感じるだろうと思います。長らく病院で勤務していた経験からいって病院の医者の気持ちもよくわかります。がんセンターにいた頃のことですが、主治医意見書を書いてくれと持ってこられても3ヶ月に1度、10分か20分ほどしか顔をあわせない患者さんのことを細かく記載することは難しいですしでも患者さんのために必要だからと思って主治医意見書を書いたらそれがために「かかりつけ医」になってしまって、脳梗塞で倒れて呼ばれた救急隊から病院には救急受け入れ体制も脳外科もないのに夜間に受け入れを要請されて困ったこともありました。生活まで含めてきちんと診ようとすると深入りしてしまって時間がなくて他の患者さんを診ることができなくなるので割り切って自分の関連する病気の所だけを診るようにせざるを得ないのです。それが続くと、言われるようにバランス感覚を次第に失ってゆくのかもしれません。それが嫌だったのも、在宅医療への転身を考えるようになったひとつのきっかけでした。まっちゃんから以前聞いた話と今回の患者さんにどうやら共通する(かもしれない)のは、生活も含めて全体をみるかかりつけ主治医、つまり病院主治医と連携していろんな治療選択肢を提示して本人が理解できる言葉で説明できるかかりつけ医をこれまで持たず、病院の専門外来の主治医だけをかかりつけにしてしまっていたことかな。
あるいは、かかりつけ医がいてもその役割が果たされていなかったのか。患者さんや家族がそう思いこんでいるほどには病院の専門科の医師にはその自覚はない(か、あっても薄い)点で意識のズレがあるように思います。専門科の医師にそこまでを要求するのもなかなか難しい話ですので、治療のめどが立った時点であとは在宅医にバトンタッチしてもらってもよいかなと思います。