こんにちは。医師の小林です。
ある患者さんの話。食欲が出ないと連絡があった。診療に出かける前に、前回の採血データをチェックし、貧血などいろいろな原因の可能性を考えていた。ところが患者さんのところに行き、ご家族の話を聞くと実は入れ歯の調子が悪かったことが判明した。入れ歯の治療が出来るまで、あまり噛まなくても食べられるものを食べてもらうようにお願いした。すると食事量も回復したと。　しばらくして大学の講義でのことを思い出した。もちろん教科書など活字を読んで学ぶこともたくさんある。しかし、卒業して臨床に携わると「患者さんから教えてもらうことはたくさんある」と。上記の場合のように、ご家族から入れ歯の話を教えてもらうことが出来なければ、原因検索で苦労していた可能性がある。たとえば、血液検査の結果も重要だが判断材料の１つにしかすぎない。患者宅を訪問して、本人の診察や住環境を観察して、患者や家族のお話をよく聞いて始めて原因が判明することもある。患者宅に訪問する、現場に訪れることの大切さを再認識した次第である。