〒700-0924
 岡山市北区大元1丁目1番29号

電話応対時間 平日 9:00~17:00

トピックス TOPICS

2010年1月28日

ももたろう往診クリニックのめざすもの(理念)

「家に帰りたい・・・」と言いながら
病院で亡くなる患者さんをたくさん見続けてきて、何とかしたいと思って病院を辞め、郷里岡山で立ち上がった元外科医の想いです。
これまで18年間、外科医として走り続けてきました。
一昨年までの6年間は岡山大学関連病院の四国がんセンターで、肺癌を中心とした呼吸器外科手術を専門に研鑽してきました。
手術の技術向上がそのまま患者を救うことにつながると信じ、手術が終わって退院してゆく患者さん達の、”ありがとうございました”といって嬉しそうに帰ってゆく姿が何よりの喜びでした。
もとより無病息災は万人の願いであり、手術とは病の元を取り除いて有病から無病に戻す医療です。
癌という病気の性質上仕方ないことですが、頑張って手術を乗り越えて一旦は元気に帰っていった患者さんの中で、再発してまた入院してくる人も多くあります。
内科で抗癌剤治療を行ったり、放射線治療医と相談して放射線治療をしたりするわけですが、ベストと思われる治療が行われても病気がどんどん進行して治療効果がみられないことも ままあります。
治療が順調にいっている間はよいのですが、治療と再発を繰り返してやがて今の治療医学が無力となる時がくると、治療というよりも”緩和医療を伴った療養”が中心となってきます。
病院とは治療の場であって療養の場ではないという現在の趨勢では、特に診断と治療の場であるがん専門病院にあっては、療養を目的として長期入院することが難しくなってきました。
「うちではもうできる治療がないので、近くの病院でみてもらってください・・・・」 と仕方なく伝える内科医の言葉に、もはやサジを投げられたと感じて涙する患者さんの姿もたくさん見てきました。
運良く近くの病院に転院できたとしても、もはや積極的な治療ができる段階をすぎて疼痛コントロールや全身管理のためだけに、人生の最後の時までの貴重な時間を病院で過ごさなければならないというのが現状です。
家に帰ることを願いながら病院で亡くなっていった患者さんのなんと多いことか。
やっぱり、住み慣れた自宅で家族と共に有意義に過ごせるほうがいいに決まっています。
癌に限らず、脳卒中など加齢に伴って増える疾患で障害が残るなどの、たとえ治らない病気や障害が1つや2つあったとしても、病と共存する形で良い状態を保つことはできるはず。
そして良い医療環境を提供できたなら、自宅でも療養は可能なはずです。
しかし、悲しいかな 病院の勤務医である以上、現在の病院のシステムでは そこまでのところは診てあげられないのです。
私が手術した患者さんの中には、「先生に手術してもらってよかった」 と言ってくれた方が何人かありました。
外科医にとってはこの上ない喜びを感じる言葉です。
肺癌2期で手術を行い、術後に化学療法を行ったものの 残念ながら再発してしまった、ある患者さんがありました。
「先生に全てをお任せしています。 最後まで 死ぬまでみて下さい・・・・・」
その方は病院から片道2時間近くかけて通ってこられていました。
入退院を繰り返して、全身が次第に衰弱し、最後は近くの病院にお願いせざるを得ませんでした。奥さんから後に頂いた年賀状で、不本意な亡くなり方をされたことを知りました。
システム上仕方のないこととはいえ、痛みに苦しんだりすることないように、自分が最後までみてあげたかったという思いが残りました。
・・・なんで、死ぬまで診て欲しい、と全面的に信頼してくれたのだろう・・・
自分が特別素晴らしい手術をしたわけでもなく、特別回復が早くて楽だったわけでもない。手術中のことは全身麻酔で知るはずもない。
・・・とすると、手術前後の入院中の期間の患者さんと自分とのかかわり、そしてその後の短い外来でのやりとり。その部分で信頼してもらっていたに違いない。自分としては真剣勝負の手術中よりも、むしろそうでない部分のほうが重要だったということか・・・?
手術する医者は自分じゃなくても代わりはいくらでもいるけれど、自分にしかできないことは、いったい何だろう・・・?
そんなことをしばらく考えていました。
いっぽう現状をみれば、病院から離れて自宅での療養を、それも癌の末期や医療処置の多い比較的重症の患者さんまでを含めてサポートできる医療資源は、特に地方ではまだまだ足りません。
病院の勤務医と、往診しない開業医の先生の狭間にいて診てもらえない、通院が困難な患者さんを専門に診る仕事が、いま必要とされているのではないか・・・。
癌末期や呼吸不全、脳梗塞後などのため通院が困難となった患者さんが安心して自宅で療養できるように、医療面からサポートするシステムが社会インフラとして不足しており、また今後も必要とされるのではないか。・・・・・無病息災から一病息災、二病息災へ。治す医療から支える医療へ。
自分の頭の中で、パラダイム・シフトが必要だと考えました。
医療依存度が比較的高い重症の患者さんを在宅でみることを考えた場合、気管切開や人工呼吸器、胃瘻、尿道カテーテル、中心静脈カテーテルや皮下埋め込みポート・・・などなど、これらは これまで肺癌手術を専門としていた自分にとっては難なく造設手術をしたり管理したりしていたものばかりです。
高齢者に多い高血圧や糖尿病などの慢性疾患の管理も、内科の専門医のようにはいきませんが術前・術後の管理として当たり前にやっていましたから、一般のかかりつけ医としての管理ならできるはずです。
病院の医師の見方では(そして世間一般でも) 病院の専門医のほうが偉くて、かかりつけ医が一段低くみられてしまう傾向にあることは否めません。
第一線病院の専門医から在宅医へ転身することに大きな迷いがあったことは事実です。しかし大病院の外来の椅子に座っているだけでは、やはり病院に来ることのできる患者さんの、それも病気の部分しか、みることはできません。
まだまだ在宅医療のインフラが少ない岡山に在宅医療専門の診療所を立ち上げて、病院勤務医の立場からみても安心して自分の患者を任せられるような医療を、自分の親が将来動けなくなったとき安心して自宅療養をサポートできるような医療を展開してみたいと考えて、苦労して培った手術技術を封印しメスを置くという一大決心をしました。
在宅医療を専門にやっていくことを考えた場合、在宅医療特有の考え方とか、質の高いサービスをいかに患者さんに提供するかという運営の点ではたくさんのノウハウが必ずあるはずだと考えました。
そして在宅医療の最先端で実践経験を積むことを目的として、2009年4月から1年間、全国でも有数の在宅医療専門クリニックで経験を積んできました。
患者さんが安心して自宅で療養できるための医療を、今度は岡山で多くの患者さんに提供したいと思っています。
ももたろう往診クリニックのめざすもの
外来通院できなくなった高齢の患者さんや、人生の最後の時間を自宅で家族に囲まれて過ごすことを選んだ末期癌の患者さんが、自宅で安心して療養できるように 訪問して医療・看護の面から自宅での療養生活をサポートします。
【理念】
私たちは 看護・介護・保健福祉スタッフと協力しながら
医療・看護面からの援助を提供し、通院困難な患者さんが望みの療養環境で
安心して過ごせることを目指します。
【特徴】
①在宅医療に特化しています。
往診に注力するため、あえて外来診療は行いません。
訪問診療に特化して、在宅医療を専門に行います。
もし外来診療があると、診療中に調子が悪い患者さんから連絡があっても待合室の患者さんを待たせたまま往診に出かけることはできません。
潔くわりきって外来診療をしないことにしました。
外来通院の代わりに定期的に患者さん宅を訪問し、かかりつけクリニックとして日頃から健康管理を行います。
②岡山市内を中心とした地域に伺います。
国道2号線 青江・新保交差点から車で約20分~30分程度までの範囲が目安ですが、詳細は御相談下さい。
③御自宅へ月2回程度定期的に訪問して診療を行い、かかりつけ医として日頃からの健康管理を行います。
現在、総合病院へ入院中で退院予定であったり専門医へ外来通院されている場合でも、主治医と連携して訪問診療を行います。
④定期的に訪問診療を行っているかかりつけ患者の方には24時間・365日の対応を行います。
定期的に訪問診療を行っている患者さんの病状に変化が生じた場合は 夜間・休日も含めて24時間連絡を受け、必要に応じて往診します。入院治療が必要な重症の場合は病院へのコーディネイトを行います。患者さんの安心のためにはいつでも連絡のつくことが必要と考えます。
⑤病状によって病院への外来受診や入院治療が必要と判断される場合には病院への手配を行います。
在宅医療は在宅だけですべてが完結するものではありません。在宅での診断・治療に限界があるときには、患者さんの希望や状態を考慮しつつ対応します。
⑥他の医療機関・訪問看護ステーションをはじめ、ケアマネージャー・薬局・介護・福祉など在宅療養にかかわる他職種スタッフとの連携を重視します。
病気だけをみる医療でなく、「療養生活を支える医療」を実現するためには 他職種スタッフとの連携が不可欠と考えます。
⑦医療保険制度に基づく訪問診療を行います。
訪問診療・往診なんて贅沢? ・・・そんなことはありません。
医療保険制度で規定された「在宅療養支援診療所」が行う保険診療です。
⑧訪問診療のための交通費は頂いておりません。
制度上は往診のための交通費を別に請求することが可能ですが、タクシー代に匹敵するような交通費のことが頭にあって往診依頼をためらわれることがないように、と考えました。
ももたろう往診クリニック 小森栄作