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2010年9月5日

岡山済生会総合病院の市民公開講座に行ってきました

4日土曜の午後に、岡山済生会総合病院の市民公開講座に出席してきました。
岡山大学緩和医療学講座の松岡教授が「あなたがいるから元気になれる」というタイトルで1時間あまり講演され、その後、「患者会とがんサロン」と題して 患者会の紹介がありました。定員200人とのことで、患者さんやその家族、看護師さんと思しき人達等々集まっていました。「りんごの会」(乳癌)、「もみじ会」(ストーマ、WOC)、「あしたの会」(婦人科がん)、そしてがんサロンなど、多くの患者会として活動されていることを知りました。

松岡先生のお話の中で、緩和医療と介護、そして在宅医療の3つは 切っても切れない関係にあると話されていたのには大変感銘をうけました。私も、全くその通りだと考えます。特にがんなどの病気で終末期になると自分で思うように動けなくなりますから、誰かのお世話にならなければなりません。従って介護のないターミナル・ケアはあり得ないと思うのです。

「言わなかったらわからない」・・・これは、がんの痛みについて、主治医にきちんと伝えましょう、という主旨でお話されていました。
そこで私が感じたこと。・・・痛みに関してもそうですが、こと、患者さんや家族の持っている”意思”や”希望”という事に関してもこれは言えるのではないか。
そして、痛みに関しては主治医「痛みがありますか?」と聞かれたときに言えばすむことですが、希望やリビング・ウィル・・・たとえば、延命治療はして欲しくない、とか 最後は病院でなく自宅で過ごしたい、とか そういった希望について医療者側から聞かれることがまだまだ少ないのではないか、またそういった希望や意思を表明する場所・機会などが、まだまだ少ないのではないかと感じます。どこかで、「言わなかったらわからない」・・・でもなかなかそんなことが言える患者さんは少ないのかもしれません。
先週、初めてお会いした患者さんのことを思い出しながらそんなことを考えていました。
現在、病院に2週間ごとに外来通院しながら抗癌剤治療を受けている方です。病気のことは全て主治医から説明を受けてだいたいのことを知っておられました。
自宅に伺ったとき、「いつか死ぬときは病院でなくて、自分の作った庭で、自分の育てた盆栽を眺めながら死にたいと思うんです・・・ 」と、はっきり言われました。そして、「冗談交じりに看護師さんにそんな話をしようったら、その看護師さんが、”それなら私の知っている先生がいるから・・・”ゆーて主治医の先生に話をしてくれて・・・」、そこから当院へ紹介となったということです。 「病院に盆栽を持ち込むわけにもいかんし、無理かなぁと思いよったけど、・・・そんなことが本当にできるかもしれんとは、全然思うとりませんでした・・・・ いよいよ動けんようになったら、ベッドをいつでも庭が見える縁側に移すことに決めとるんです・・・」 外来化学療法室の看護師さんがたまたま我々のことを知っていてくれたこと、そして化学療法の点滴を受けている間に本人が冗談交じりにでも自分の生死に関わる思いをぽつりとこぼせるような、そんな関係を作ることができていたこと、その2つの条件がたまたまあってのご縁でした。まだどうなるかわかりませんが、その2つのうちどちらかでも欠けているとこの方の希望は実現にはほど遠いものであったかもしれません。 自分で座って話ができ身の回りのことがまだ十分可能な段階で紹介して頂けると、我々としても患者さんや御家族としっかりとした信頼関係を築くための時間を持つことができます。その点では、患者さんの思いを汲んで早めに紹介して下さった今回の病院主治医の先生の先見力にも感心しました。
最後の時まで、住み慣れた自宅で過ごしたい・・・その思いを 是非かなえてあげたいと思います。