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2010年1月29日

開設への想い

~岡山で本格的に在宅医療をやりたい~
これまで18年間、外科医として走り続けてきました。
ここ6年間は岡山大学関連病院の四国がんセンターで肺癌を中心とした呼吸器外科手術を専門に研鑽してきました。手術の技術向上がそのまま患者を救うことにつながると信じて、手術が終わって退院してゆく患者さん達の、”ありがとうございました”といって嬉しそうに帰ってゆく姿が何よりの喜びでした。
もとより無病息災は万人の願いであり、手術とは病の元を取り除いて有病から無病に戻す医療です。
癌という病気の性質上仕方ないことですが、頑張って手術を乗り越えて一旦は元気に帰っていった患者さんの中で再発してまた入院してくる人も多くあります。内科で抗癌剤治療を行ったり、放射線治療医と相談して放射線治療をしたりするわけですが、ベストと思われる治療が行われても病気がどんどん進行して治療効果がみられないこともままあります。
治療が順調にいっている間はよいのですが、治療と再発を繰り返してやがて今の治療医学が無力となる時がくると、治療というよりも”緩和医療を伴った療養”が中心となってきます。病院とは治療の場であって療養の場ではないという現在の趨勢では、特に診断と治療の場であるがん専門病院にあっては、療養を目的として長期入院することが難しくなってきました。「うちではもうできる治療がないので、近くの病院でみてもらってください・・・・」 と仕方なく伝える内科医の言葉に、サジを投げられたと感じて涙する患者さんの姿も見てきました。
運良く近くの病院に転院できたとしても、もはや積極的な治療できる段階をすぎて、疼痛コントロールや全身管理のためだけに人生の最後の時までの貴重な時間を病院で過ごさなければならないというのが現状です。家に帰ることを願いながら病院で亡くなっていった患者さんのなんと多いことか。やっぱり、住み慣れた自宅で家族と共に有意義に過ごせるほうがいいに決まっています。
癌に限らず、脳卒中など加齢に伴って増える疾患で障害が残るとかいった、たとえ治らない病気や障害が1つや2つあったとしても、病と共存する形で良い状態を保つことはできるはず。そして良い医療環境を提供できたなら、自宅でも療養は可能なはずです。
いっぽう現状をみれば、自宅での療養をサポートできる医療資源は、特に地方ではまだまだ足りません。 病院の勤務医と往診しない開業医の先生の狭間にいて診てもらえない、通院が困難な患者さんを専門に診る仕事が、いま必要とされているのではないか・・・。 癌末期や呼吸不全、脳梗塞後などのため通院が困難となった患者さんが安心して自宅で療養できるように、医療面からサポートするシステムが社会インフラとして不足しており、また今後も必要とされるのではないか。・・・・・無病息災から一病息災、二病息災へ。治す医療から支える医療へ。パラダイム・シフトが必要です。
まだまだ在宅医療のインフラが少ない岡山に在宅医療専門の診療所を立ち上げて、病院勤務医の立場からみても安心して自分の患者を任せられるような医療を、自分の親が将来動けなくなったとき安心して自宅療養をサポートできるような医療を、展開してみたいと考え、メスを置くという一大決心をしました。
そして在宅医療を専門にやっていくことを考えた場合、在宅医療特有の考え方とか、質の高いサービスをいかに患者さんに提供するかという運営の点ではたくさんのノウハウが必ずあるはずだと考え、在宅医療の実践経験を積むことを目的として、2009年4月から1年間、全国でも有数の在宅医療専門クリニックで経験を積んできました。
患者さんが安心して自宅で療養できるための医療を、今度は岡山で多くの患者さんに提供したいと思っています。