11日の水曜の晩、第1回岡山市訪問診療スタート支援研修会が衛生会館で開催され、「病院から在宅へ」、と称してグループディスカッションが行われました。当院からは常勤医3名全員参加。
94歳男性、胆のう癌、肝転移、心臓発作で99%狭窄による狭心症、出血性胃潰瘍の診断、ステント治療せず輸血のみ施行、酸素3Lを施行中、癌性胸膜炎による胸水貯留あり胸腔穿刺2回実施、食事は少量のみ摂取可能、息子夫婦が介護の予定、本人は自宅への退院を強く希望、とまあこんな症例提示があり、それに対してどう対応したらよいかという意見を出し合うという企画でした。
こんな状態では在宅療養は無理ではないかといった意見や、一歩踏み込んだ対応を考える意見など、いろいろ出ていました。
こういった状態の患者さんの退院後の在宅療養のお手伝いをすることは当院では日常茶飯事です。どうしても検査や治療 ということを優先して考えてしまうのが医者の性なのですが、そうすると 在宅は難しいという結論にいってしまいがちです。
本人や家族が望むのであれば 在宅療養させてあげたい、そのために何ができるだろうか。
病状からいうと積極的な治療 (Cure キュア)はできないかもしれないけれど、痛みや苦痛となる症状を取り除いて気持ちよく過ごせるようにしてあげること (Care ケア)はできると思います。・・・そこを考えることが我々在宅医の役目です。
在宅医療に携わる医師や看護師にもいろんな考え方があることは理解できますし患者さんが望むのなら、在宅でもCureを追求するという姿勢も もちろんあってよいと思います。が、多くの場合、自宅へ帰りたくても帰れない要因の大きなものはCure 一辺倒の発想であるような気がします。
Cure から Careへの パラダイム・シフト(考えの枠組みの再構築)が必要だと思うのです。
もちろん、在宅だから何もしないできないということはありません。当院では 胸腔穿刺・腹腔穿刺や麻薬持続皮下注など、自宅でできる限りの病院なみの緩和治療も、必要に応じて行っています。いろんな治療のカードを手元にもちつつ、Cure一辺倒にならず、満足して過ごせるようにCareを重視する、治す医療から 支える医療へ。そのためには 看護やケアマネジャーや薬剤師、ヘルパーなどなど、いろんな職種の人達との協働も重要になってきます。そんな我々の立ち位置を 再確認できたよい機会でした。