ももたろう往診クリニックでは、岡山大学医学部から実習生を受け入れています。
実習を終えた学生さんの感想をご紹介します。
岡山大学医学部6回生 【実習期間】2017年4月 2週間
今回の地域医療実習では、「岡山市内での地域医療」を実践されている姿を見学させて頂きたいという思いから、ももたろう往診クリニックでの実習を希望しました。 往診という診療について漠然とした印象はあったものの、往診ではどのような診療がなされているのか、どこまでの地域を往診でカバーしているのか、往診専門のクリニックとはどのように成り立っているのか等、見学に当たるまでイメージできずにいました。
この2週間の実習ではそうした疑問点を理解しつつ、今まで自分の中にあった地域医療のイメージがいかに狭小であったかを考え直す良いきっかけになりました。病院に通える力や周りからのサポートが不足してしまったために往診という医療を必要としている患者さんが多々おられること、そのような患者さんのため、医療スタッフの皆様の尽くされたベストの上に満足度の非常に高い医療が提供されていること、そして患者さんの幸せそうな顔を見て感謝なさっているご家族の顔が沢山あったことを見学し、これから往診のニーズが増えてくるであろうことやその大切さを身をもって感じることができました。
こうした医療の裏側では往診に向かう車中の会話では患者さんの病状やガイドラインの話だけでなく、ご本人・ご家族の性格や家の綺麗さ/汚さによる家庭環境の把握・あるいは患者さんの好きなお菓子の事まで把握された診療方針を話されるスタッフの方々の姿があり、大病院に比べ患者さんを一患者としてだけではなく、一人の人間として扱い診察されている姿勢を感じさせられました。その一方で、密接な診療をなさっている分、ご家族からの発言や訪問する住居の環境については病院では見ることのできない厳しい面もあり、それらを冷静に対処なさる努力とプロ意識も伺う事ができました。
また、ももたろう往診クリニックでは24 時間の対応をされており、深夜から診察されていた医師の先生の口から「どんな事でも往診に来ますから、気になることがあったらいつでも電話なさって下さい。」と患者さんにお話なさっていた真摯な姿に心を打たれました。慌ただしい診療の中で患者さんと向き合う暇がなかなか取れない市中病院と対をなす熱心な姿勢は、ぜひ見習わせて頂きたいと思いました。
今回の実習で特に印象に残った出来事は、膵癌の末期で明日には亡くなるという方の看取り説明の際のエピソードです。患者さんのご家族は泣かれながらも落ち着いた様子で、患者さんが亡くなる時の事やその後のことを受け止めておられましたが、長い時間一緒にいられなかったことを悔やんでおられる様子でした。その際、スタッフの方々が「一緒にいられた時間よりも、一緒にいられたという事実が患者さんにとっては幸せだったんだよ」と声を掛けられ、ご家族は非常に納得されていました。
このエピソードから、亡くなっていく患者さんたちの本音は「家族に迷惑をかけずに死にたい」という事ではなく、「一緒にいてくれてありがとう」という事を伝えたいのではないかと感じました。ご高齢の患者さんの中には介護されることの罪悪感を語られる方もおられますが、本当は介護してくれてありがとう、一緒にいてくれてありがとうと伝えたいのだとはっきり分かりました。そのような思いを患者さん・ご家族双方がコミュニケーションできる医療という意味で、往診は最後まで人間らしく生きることができる医療だと思います。
二週間という短い間でしたが、今回の実習では大学だけでは得られない貴重な経験を多々勉強させて頂きました。最後になりましたが、小森先生をはじめ、親切にして下さったクリニックのスタッフの方々に改めて御礼申し上げます。本当にありがとうございました。