いつもこちらから患者さんのお宅に訪問することには慣れているのですが、逆に訪問を受けることもあります。
とある早朝に、Ｋさんの御主人が、近くに来たついでにとクリニックまで寄って下さいました。
ちょっと車のほうに来てよ、といわれるままにみんな車までついてゆくと、家庭菜園でできた取れたての野菜がたくさん！
手に手に袋をもらって、・・・・・たくさんいただいてしまいました。
職員の主婦の皆さんが嬉々として持ち帰って、夕食の食卓にのぼっていたことでしょう。
Ｋさんのお宅には、訪問診療と訪問看護で1年近く伺っていました。
Ｋさんは結局悪性の病気のために昨年亡くなられたのですが、それまでの間、住み慣れた自宅で御主人や娘さん夫婦やお孫さんなど、たくさんの家族に囲まれて、とても良い日々を過ごされていたと思います。診療で訪問するたび笑い声が絶えないお宅でした。
看護師が訪問看護にいくたび
「これ、持って帰られぇ」と言われて いろいろ野菜を頂いてきていたので、夕方クリニックに野菜の袋があると　あ、Ｋさんの所へ行っていたんだなとわかっていました。
「看護に行ってるのか、托鉢（修行中のお坊さんが家々をまわってお経を上げて米や野菜をもらう）に行ってるのか、わからなくなっちゃいますね～　」とか、看護師チームの雑談にのぼっていたのを覚えています。
いつだったか、ナースなかちゃんが、Ｋさんのところへ訪問看護にいったときの事を話してくれたことがありました。
いつも御主人がＫさんのことをとても大事にしてあげていているので
「御主人いつも優しくていいですね～・・・どうしてあんなに優しくして貰えるんですか？」　と尋ねたんです。
そしたらＫさんが、「昔はそうでもなかったんよ～　いろいろあったから・・・・でも、この歳になってみたら今みたいになってくれたんよ。だから あなたも、歳とったらきっといいことあるよ～・・・」と言ってくれたんですよ。
何をどう相談したのかわかりませんが、Ｋさんの言葉が妙にナースなかちゃんの心に響いていたようでしみじみ話してくれたのを覚えています。
患者さんや御家族と、こんな心のつながりが訪問看護のときにできるのって、すばらしいですね。
だからこそ、Ｋさんが亡くなった今でも御主人がこうして時々訪ねてきてくれるのでしょう。