続きです。退院して帰ってきたあと、訪問したときにFさんの奥さんが言われていたことが印象に残りました。~隣のベッドに入院していた同じくらいの歳の男の人が、しみじみ息子さんに、頼むんですよ。
「もうわしゃー ようなって、どこもわりぃところはないんじゃから 頼むから連れて帰ってくれぇ・・・」
そういって すがるように頼んで言われるけれど、息子さんは何も言えなくて ただじっと新聞を見ているだけで・・・。
私も、その人が大きな声でわめき散らすんだったら何も思わないんですが、しっかりされとるのに何でこの人が帰れないのか、・・・ふびんで不憫で、・・・ 涙が出そうでした・・・
うちのお父さんは先生のところでみてもらっていたので、このままで連れて帰るといったとき、すんなり帰らせてもらえて良かったんですが、ほんとにあの人があれだけ頼んでいるんだから、帰れたらいいのに・・・と思ったんです。どのような事情でその方が入院していなければならないのかはわかりません。はた目でみる(聞く)より大変な事情があるのかもしれませんが、意識もしっかりして会話も普通にできるような方の思いが通じず、自分の身の振り方すら自分で決められない、というのは少し寂しいですね。長年生きてきて人生の終末も近い時期に、せめて自分の好きなようにさせてあげられたらと思います。
医療の面での支えがあれば家に帰れる、というなら、当院スタッフはじめ、連携する事業所もみんな喜んでお手伝いすると思います。今も80代で老衰~終末期を迎えつつあって、頑として入院を拒否し、遠くに住む子供さん達が交代で付き添っている独居女性と、病院主治医から入院していた方がよいのでは、と言われながらも我がままを通して退院し、肺癌末期で麻薬と酸素を使いながら、隣人達がお世話してくれて自宅療養している独居男性のお手伝いをしています。
とことん頑固に思い通りにしたいという人ほど、自宅で過ごす満足度は高いのかもしれません。昨日は自宅の自分の部屋で最後まで過ごされた白血病末期の患者さんが、大勢の御家族に看取られて最期を迎えられました。
他にも乳癌や膵癌などの末期で 御家族の暖かい介護を受けながら、今 この時この瞬間も、最後の時間を家族と一緒に自宅で過ごされている患者さん達がいます。そんな方達からの依頼に応えて 今日も診療に走り回った1日でした。
2012年4月16日