夏休みを利用して島根大学医学部の学生さんが3日間の実習に来られました。
実習を終えた学生さんの感想をご紹介します。
島根大学医学部1回生 【実習期間】2024年8月 三日間
医学部に入学して4ヶ月余り。これまでに習ったことと言えば、体を構成する細胞のようすや化学反応の仕組み等々…。基礎的な内容を学ぶことによる土台づくりの重要性は認識しつつも、もはや自らが医学生であることを半ば忘れかけていた私にとって、医療の現場を生で体験することができた今回の実習は、毎日が驚きと感動の連続でした。
実習では訪問診療や往診に同行し、実際の診療の様子を間近で見学させていただきました。外来・入院診療は一患者として経験があったものの、在宅医療の現場に立ち会うことは私にとってまったくの初めてでした。
3日間で20軒近くの患者さんのお宅にお邪魔させていただきましたが、まず何よりも強く感じたのは、それぞれの患者さんには、それぞれの歴史があり、背景があるという、当たり前の事実でした。それは患者さんご本人やご家族との会話であったり、家中の調度であったり、あるいは壁に掛けられた写真などを通してびんびんと伝わってきました。こちらから患者さんの元に出向くことで、外来や入院など病院にやってくる患者さんからは捨象されていて感じることの難しい、一人ひとりの個性や価値観、生き様といったものの一端に直接触れられるという魅力が在宅医療にはあり、「病気を診る」というよりも「人を診る」といった方がふさわしい、まさにそんな現場の数々でした。
「多職種連携」、「地域包括ケア」など、あちこちで聞いたことはあるものの、その意味するところがよく分かっていなかった概念を、実際にその様子を目の当たりにすることで、実感を持って理解できたことも、今回の実習を通して得られた成果の一つです。ももたろう往診クリニックでは、毎回の診療時に「診療時のメッセージ」として、その日行った処置の内容や気になった点などを、気温や血圧などと共に紙に書き残す取り組みが行なわれていたのですが、それは患者さんやご家族だけでなく、訪問看護師さんやホームヘルパーさんなど、他の事業者の方々との情報共有ツールとしての役割を果たしていました。
また、幸運なことに、病院を退院後に「ももたろう」の訪問診療を受けることになった患者さんの退院前カンファレンスに同席させていただく機会にも恵まれました。そこでは主に病院の主治医から在宅医への申し送りが行われるのですが、患者さんやご家族のみならず、ケアマネジャーさんや言語聴覚士さん、これまで患者さんを支えてきた病院の看護師さんやリハビリスタッフさん、さらには在宅医療機器を提供する企業の方までもが一堂に会し、入院の経緯や経過、今後の見通しや療養上の注意点といった情報の共有がなされていました。患者さんご本人も口にしておられましたが、これだけ多くの方々が連携し、チームとして支えてくれることは、患者さんにとってもご家族にとっても心強く感じられるのではないかと思いました。
総括になりますが、この実習を通してスタッフの皆さんの仕事ぶりを拝見する中で、その患者さん本位の姿勢に強く感銘を受けました。もし将来、訪問診療を受けるなら「ももたろう」にかかりたいな、住んでいる地域に「ももたろう」があったら安心だろうな、と心から感じました。私もそう思ってもらえるような医療者を目指して、これから精進してまいります。
最後に、お忙しい中、実習を受け入れてくださったスタッフの皆様と、見学をお許しくださった患者さんやご家族の皆様に心より感謝申し上げます。ありがとうございました。
2024年8月23日