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2018年4月23日

待機当番の日曜に・・・

市街地を少し離れて郊外に車を走らせると、心地よい風に鯉のぼりが泳ぐ季節になりました。

そんな中、今日、またひとつの命が終わりを迎えました。 
80代後半の男性、3月から次第にだんだん食べられなくなり少しずつ衰弱が進んできていました。
病院受診でも特に異常なく、老衰のようです、とのことで4月に入って訪問診療に切り替わりました。奥さんの希望に沿って、しばらくは自宅で控えめに点滴を続けていました。介護生活が2週間を過ぎ、奥さんが(家でみるのは)もう無理かも・・・と感じ始めた頃、いつまでも続くわけではないこと、もうあと数日だと思うから、せっかく頑張ってここまで看て来られたのだから、もうちょっとだけ頑張ってみませんか?と診療時にお話ししたのが3日前のことでした。
息子さん夫婦も同居されていて、たぶん大丈夫、という見通しを持っての働きかけでした。夕方、御家族から呼吸が止まったようですという穏やかな連絡を受け、臨時往診に向かいました。
この週末に親族も近所の方も面会にこられたり、今日も曽孫さんが色々話しかけたりして、話す力はなかったけれど目で合図したり手を動かしたりして応えていたそうです。
夕方になって、奥さんや息子さんたちが側にいる中、ふと気づくと呼吸していなかった、ということで家族に囲まれて眠るように静かな最期でした。
「お父さん・・・ ええ所へ行かれぇよぅ・・・」と手を取って静かに語りかける奥さんの姿が印象的でした。
いつもは診療車で出かけるのですが、今日は天気も良かったので、久々に車齢22歳の2シーターの”高齢車”の幌を開けて乗り出し自宅から南区まで約30分のドライブをささやかな楽しみの時間に変えて。
患家に向かう途中ののどかな景色に、車が全然走っていない田舎道で 思わず車を停めてパチリ♪

死亡診断書を書き終えて玄関で御家族に挨拶したあと車に向かおうとして、家の庭先からの眺めに、気がつくとしばらく足をとめていました。
田んぼが広がる遥か向こうに見えるのは、金甲山から貝殻山へと連なる山々でしょうか。
90年近い人生のうち、かなりの時間をこの地で過ごし、庭先からこの景色を日々眺めながら月日を重ねて生きてこられた・・・

大工として働いてきた中で、自分で建てた思い入れのある家で、この地で、
家族に囲まれて最期の時まで過ごすことができた・・・
そのお手伝いができて、よかったと思いました。
夕日が傾いて田んぼを渡る風が少し涼しげになった中をそんなことを考えながら
帰り道、再び田舎道を走り抜けたのでした。