今週のある日の朝6時頃、早朝のジョギングに走る人たちを車で追い越しながら帰ってきました。
5時頃に患家に到着し、死亡確認し診断書を書いてきた帰りです。
末期癌で療養中の50歳代の女性患者さんで、外泊中に急に容態が悪化したのでこのまま自宅で看取ってあげたい、との御家族の希望で紹介を受け、先週末から診療に伺っていました。 訪問看護師さんから呼吸状態の変化の連絡を受けて前日昼間に訪問した際には、容態から見てあと半日か1日以内でしょうとお話ししていました。死亡確認したあと、いろいろと亡くなるまでの話を伺いました。
ずっと介護してきた娘さんとその日仕事を休んだ息子さんに加え、御主人が夕方仕事を早退して帰ってこられ、娘さんの御主人や更に遠くの親族の方も集まって、辛気くさいのも何だから、と既に呼吸状態の悪くなった患者さんのベッドサイドに集まって夜から一杯飲み始め、夜半2時頃まで”ドンチャン騒ぎ”をしていたそうです。
「夕方から夜にかけて 血圧が80台、60台とだんだん下がってきていたのが みんなで騒いでいると100を超える迄に上がってきたのにはびっくりしました。」と息子さん。娘さんも
「先生が”最期まで声は聞こえている”と言われていたとおり、やっぱりみんなの声が聞こえているんだと思いました」と言われていました。
患者さんがかわいがっていた犬をベッドに放してやると、いつもしていたように寝ている横に添い寝していたということでした。
みんなの楽しそうな声を聞きながら最期の数時間を過ごして見送ってもらえるなんて、患者さん本人にとっても嬉しかったのではないでしょうか。在宅療養だからこそできる見送り方。自分たちの家だから、何でもありでしょう。本人らしく。自分達らしく。それを実現できるのが在宅療養の良さだと思います。このときもそうでしたが、御家族は時に冗談言ったりしながら笑っているんですね。病院で亡くなると、家族はひとしきり泣いたあと他の患者さんの目を気にしながら病院の裏口から葬儀社の用意した寝台車に乗ってひっそりと病院を後にすることになります。亡くなった患者さんの寝台のあとを御家族と一緒についてエレベータから病院の裏口まで行き、看護師さん達と一緒に寝台車が病院を後にするのを見送り、最後に「お疲れ様でした」と言ってまた病棟の仕事に戻る・・・そんな光景をこれまで何度となく経験してきました。家族の方が笑ってるなんてとても考えられませんし、そんな雰囲気でもありません。しかし家だと皆さんリラックスされていますから、御家族によっては笑顔がみられたり笑ったりと、家風とでもいうのでしょうか、いつもと同じようにされています。
亡くなられたお母さんは若い頃からずっとジャズダンスを踊っていたそうで、旅立ちの衣装はその頃の晴れ舞台の衣装にしようとお話しされていました。お宅をあとにするとき「先生のような方がいると家でも安心です。とても感謝しています」と言って下さいました。そのひと言が、我々ももたろうスタッフにとっては明日への元気の素になります。
診療にでかけているとき車を降りて患者さん宅に歩いてゆくとき、ふと見かける風景に季節を感じます。